ネットワークエンジニアは、技術(スキル)も大事だけど、コミュニケーションはもっと大事

いつも活躍している人は、たいてい「会話がうまい」

職場でもプロジェクトでも、いつも活躍している人がいます。そういう人をよく見ていると、ある共通点に気づきます。

コミュニケーションが、とにかくうまい。

ただ、誤解しないでほしいのですが、「よく喋る」とか「話が面白い」という意味ではありません。むしろ逆で、気づくと相手のほうが気持ちよく喋っている。自然と相手から話を引き出して、いつの間にか場の中心にその人がいる。そういううまさです。

私はずっと、ああいう人に憧れてきました。そして正直に言うと、自分はまだそうではありません。会話のあとで「もっとこう言えばよかった」「あの一言は余計だったな」と後悔することが、この仕事を10年以上やった今でも何度もあります。だからこそ、コミュニケーションはもっと磨かないといけない、と思い続けてきました。

——ところが最近、少し意外なことを知りました。自分が思っていたよりずっと、周りは私を「コミュニケーションの面」で評価してくれていたのです。喋りに後悔ばかりしている自分の、いったいどこが? その答えが、この記事で書きたいことの核心です。

技術は「土台」、その上で差がつくのがコミュニケーション

先に立場をはっきりさせておきます。技術がいらない、という話ではありません。

ネットワークエンジニア(以下、NE)にとって、技術は信頼の土台です。設計ができる、トラブルを切り分けられる、機器を触れる。これがなければ、そもそも仕事の前提に立てません。土台が抜けたコミュニケーションは、ただの調子のいい人で終わります。

そのうえで、です。ある程度の経験を積んだNEは、技術力にそれほど大きな差がなくなってきます。CCNAレベルの知識も、コマンドの叩き方も、調べればわかる。今はAIに聞けば、設定例も切り分けの観点も、かなりのところまで出てきます。

つまり、技術は「できて当たり前」の比重が年々上がっている。そして、AIで補える領域が広がるほど、最後に差がつくのは、AIが代われない部分になります。現場の調整、顧客の不安のコントロール、関係者の合意形成——要するに、人と人のあいだのコミュニケーションです。

「技術がすべて」だと思っていた頃の自分に、一番伝えたいのはここです。

褒められたのは「技術」ではなく「会話の進め方」だった

具体的な話をします。

あるお客様から、こう言われたことがあります。「ぽんふさんは会話がまとまっていて、スムーズで、すごくやりやすい」。そして、その評価がきっかけで別のプロジェクトにも声をかけてもらい、それが実際の仕事につながりました。

ここで自分でも引っかかったのは、褒められたのが「技術力がすごい」ではなかったことです。会話がまとまっている。やりやすい。評価されたのは、設計の腕でも、トラブルシュートの速さでもなく、話の進め方のほうでした。

冒頭で書いた「自己評価と他者評価のギャップ」の正体は、これでした。私は「うまく喋れたか」で自分を採点していた。でも周りが見ていたのは、相手の話を整理して、過不足なく返す部分だった。喋りの巧さではなく、引き出して、まとめる力のほうを評価されていたわけです。

そして、これは綺麗な成功談だけでは終わりません。反対の失敗も、もちろんあります。

新人の頃、言わなくていいことを言ってしまったことが何度もあります。良かれと思って一言多かったり、その場の空気で余計な情報を出してしまったり。これは正直、誰にでもあることだと思います。ただ、怖いのは——だいぶベテランの人でも、これをやってしまうということです。経験を積めば自然に直る、というものではない。だから私は今でも、ここを一番気をつけています。

この成功と失敗、実は同じ一本の軸でつながっています。

効いたのは「余計なことを言わず、相手の話を整理して返した」こと。失敗したのは「言わなくていいことを言ってしまった」こと。どちらも、何を言うかより、何を言わないかの話なのです。私はこれを「足し算より引き算」と呼んでいます。気の利いたことを足そうとするより、余計なものを引いて整える。これが、私が現場で一番効くと感じているコミュニケーションの形です。

でも、これは「仕事用のスキル」ではない

ここまで読んで、「じゃあ仕事のコミュニケーション術を身につければいいんだな」と思うかもしれません。

でも、私はそうは考えていません。

仕事のための特別な会話スキル、というものを別途インストールしようとしても、たぶんうまくいきません。商談の場だけ、障害対応の場だけ、急に聞き上手になれるわけがない。コミュニケーションは、もっと地続きのものです。

私の考えはシンプルで、日常会話で身につけたものが、そのまま仕事に出る、というものです。普段の雑談で相手の話を遮ってしまう人は、要件ヒアリングでも遮ります。普段から人の話を面白がれる人は、現地調査でも自然に相手から情報を引き出します。仕事の場面は、日常会話の延長線上にしかありません。

だから、鍛えるなら日常会話からでいい。むしろ、そのほうが自然に身につきます。

日常会話で鍛えられる、現場に効く4つの動作

では具体的に何を意識するか。会話術としてネットでもよく言われることを、NEの現場動作に翻訳してみます。どれも、まずは日常会話で試せるものです。

1. 気の利いたことを言おうとせず、「反復」する

会話を返すとき、新しく面白いことを言おうとしなくていい。相手の話で一番印象に残った部分を、そのまま拾って返すだけで会話は続きます。これは仕事だと、そのまま「認識合わせ」になります。相手の言った要件を要約して返す——たったこれだけで、後工程の手戻りが激減します。手戻りは、たいていの技術ミスより高くつきます。

2. 遮らず聞く。沈黙を、辛抱強く待つ

相手が考えている沈黙に、自分の言葉を被せない。日常では当たり前のようでいて、意外とできていません。要件ヒアリングや、障害時にお客様が状況を説明している場面で、これが効きます。相手が言葉を探している数秒を待てるかどうかで、引き出せる情報の量が変わります。

3. 「How(どうやって?)」で深掘りする

事実だけを詰めるのではなく、「どうやってそれに気づいたんですか?」とプロセスを聞く。相手が深く語れる質問です。障害の切り分けでも、設計レビューの「なぜその構成に?」でも使えます。

4. 興味を、本当に持つ

正直、これが全部の土台です。テクニックとして「興味があるフリ」をするのではなく、本当に相手や物事を面白がる。そうすれば、上の3つは自然に出てきます。

ただし——「やりすぎ」は逆効果

ここで、強く釘を刺しておきたいことがあります。

これらを真に受けて、やりすぎてはいけません。

反復もリアクションも、わざとらしくなった瞬間に効果が反転します。私は実際に、リアクションがオーバーすぎて、かえって周りから少し距離を置かれてしまっている人を見たことがあります。技を「足した」結果、信頼を損ねてしまう。これも結局、「言わなくていいことを言う」失敗と同じ構造です。やりすぎは、足し算の事故なのです。

かといって、無反応・塩対応がいいわけでもありません。多少のリアクションは、やはり大事です。相手は、反応のない人にはそれ以上話す気になれません。

つまり、狙うのは両極の「あいだ」です。

  • 足りない(無反応)→ 相手が話しづらい
  • 過剰(わざとらしい)→ 距離を置かれる

そして、このちょうどよさを狙って調整しようとすると、たいてい不自然になります。じゃあどうするか。答えは、さっきの4つ目に戻ります。本当に興味を持っていれば、リアクションは作らなくても自然に出る。作ったリアクションは過剰になり、本心のリアクションはちょうどよくなる。結局そこなんだと思います。

日常会話を増やすなら、「新しい人に会う」のが一番濃い

ここまで「日常会話で鍛えよう」と書いてきましたが、一つ抜けていました。その日常会話を、どこで増やすか、です。

気心の知れた相手との雑談は、もちろん大事です。ただ、正直に言うと、慣れた相手だと先ほどの4つの動作はかなり省略できてしまいます。お互いの背景を知っているので、わざわざ興味を持って引き出さなくても会話が成立してしまう。

その点、新しい人に会う場面は、4つの動作を全部使わざるを得ません。相手のことを何も知らないからこそ、興味を持ち、知ろうとし、引き出そうとする。初対面ほど、この記事で書いてきたことを濃く練習できる場はありません。

そして面白いのは、初対面ほど「足し算の誘惑」が強いことです。よく見られたい、気の利いたことを言いたい、と思ってしまう。でも、そこで効くのはやっぱり引き算のほうです。自分を良く見せようと喋るより、相手に興味を持って引き出す人のほうが、結果的に「また会いたい」と思われる。初対面は、引き算の効果が一番はっきり出る場でもあります。

だからこそ、もう一歩踏み込んで言うと——機会を掴める人は、新しい人に会うことを意識しているように見えます。会話術を磨くという以前に、人に会いに行くこと自体が、次の仕事や縁につながっている。私が別プロジェクトに呼ばれたのも、結局は一度新しく出会った相手との会話があったからでした。練習の場であり、機会の入口でもある。新しい人に会うことには、その両方の意味があります。

まとめ:明日から、日常会話で一つだけ意識する

NEにとって技術は土台です。それは揺らぎません。でも、土台が同じくらいのレベルになったとき、最後に差がつくのはコミュニケーションでした。それも、気の利いたことを言う力ではなく、引き出して、整理して、過剰にしない力——足し算より引き算の力でした。

そして、それは仕事用の特別なスキルではなく、日常会話で鍛えられるものです。

もし明日から一つだけ試すなら、「反復」をおすすめします。相手の話で一番印象に残ったところを、そのまま拾って返してみる。気の利いた返しはいりません。それだけで、相手はもっと喋ってくれます。日常でそれが自然にできるようになった頃、たぶん仕事の現場でも、あなたは「話を聞いてくれる人」「やりやすい人」になっています。

私自身、まだ会話のあとで後悔します。憧れているあの人たちには、まだ届きません。でも、だからこそ磨き続ける価値がある。技術と同じくらい、いや、ある場面では技術以上に——これは、一生かけて鍛えるに値するスキルだと思っています。

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