CCNA改定(v2.0/200-301)完全解説|AIセクション新設とトラブルシュート回帰

CCNAの試験説明文に、これまで見たことのない一文が加わりました。公式の原文を訳すと、「試験の一部として、ネットワーク運用とトラブルシューティングを支援するため、エージェント型AIおよびデジタルネットワークアシスタントの出力と推奨を評価することが求められる場合がある」となります。資格試験が、受験者に「AIの答えを鵜呑みにせず評価する力」を正面から求めてきたわけです。

2026年5月20日、Ciscoは通称CCNA v2.0となる試験トピックを公開しました。現場で10年以上ネットワーク設計に関わってきた立場で読み込んでみると、これは小手先の項目追加ではなく、資格が想定する「ネットワークエンジニア像」そのものの更新だと感じます。本記事では、何がどう変わるのかを公式ブループリントに沿って整理し、現場の感覚を交えて解説していきます。

なお本文では、以降「ネットワークエンジニア(以下、NE)」と表記します。

まず結論——2027年2月3日に何が変わるのか

押さえるべき事実は、次の流れに集約されます。新しい試験トピックが公開されたのが2026年5月20日。これに基づく新試験の提供開始は2027年2月3日です。現行のv1.1での最終受験日は2027年2月2日となり、ここで世代交代が起こります。

注意したいのは、試験コードが200-301のまま据え置かれること。バージョンは上がっても番号は変わらないため、取得できる資格は新旧で同等です。新旧どちらで合格しても「CCNA」として扱われ、認定の有効期間は取得から3年。つまり最終日の2027年2月2日にv1.1で合格しても、2030年まで有効なCCNAが手に入る計算になります。

そして構成面の最大の変化が、試験ドメインが6つから5つへ再編されたことです。

ドメイン構成とウェイトの新旧比較

新しいv2.0のドメインとウェイトは、次のとおりです。

CCNA v1.1からv2.0へのドメイン再配分の図解。旧6ドメインが新5ドメインへ統合・分割される流れを矢印で示す
v2.0(2027年2月〜・5ドメイン)ウェイト
1.0 Network Infrastructure and Connectivity25%
2.0 Switching and Network Access25%
3.0 IP Routing20%
4.0 Network Services and Security20%
5.0 AI, and Network Operations and Management10%

参考までに、旧v1.1は次の6ドメインでした。Network Fundamentals(20%)、Network Access(20%)、IP Connectivity(25%)、IP Services(10%)、Security Fundamentals(15%)、Automation and Programmability(10%)です。

ここで強調しておきたいのは、新旧のドメインは番号順に1対1で対応していないという点です。たとえば旧「Security Fundamentals」が消えたわけではなく、内容は新4.0「Network Services and Security」へ畳み込まれています。旧「IP Services」の中身も、SNMPやsyslogは新5.0へ、NAT/PATやDNSは新4.0へ、といった具合に複数のドメインへ再配分されました。番号だけを並べて「旧5.0が新5.0になった」と読むと、実態を取り違えます。

ドメイン名に注目すると、「Fundamentals(基礎)」という語が全体から姿を消し、「Infrastructure(基盤)」「Operations(運用)」へ置き換わっています。知識を問う構成から、現場で手を動かす構成へと重心が移ったことを、名前そのものが表しています。ウェイト面でも、基盤・接続とスイッチングの二領域で全体の50%。土台に半分を割り当てる設計から、Ciscoが足元の手堅さをむしろ重視している姿勢が読み取れます。

「自動化ドメイン」はどこへ消えたのか

ここが、国内のコミュニティでも誤解が生まれやすい部分です。「AI・自動化ドメインが完全に新設された」という説明を見かけますが、実態は少し違います。

正確には、独立した自動化ドメインだったv1.1の6.0「Automation and Programmability」が廃止され、その一部が新5.0へ吸収されたという経緯です。新設というより、複数ドメインからの寄せ集めによる再編と捉えるのが実態に近いでしょう。

新5.0が何で構成されているかを出自で分解すると、見通しが良くなります。AnsibleやIaC・管理アプローチといった項目は旧自動化ドメインからの移行組。SNMPとsyslogは、旧自動化ドメインではなく旧「IP Services」からの移行組です。そして後述する5.1・5.2が、今回の純然たる新規パートにあたります。出自の異なる項目を「運用とAI」という器にまとめ直したのが、新5.0の正体です。

整理の方向としては、JSONの読み取り、REST APIのCRUD操作、Terraformの名指しといった開発者寄りの項目が削られ、運用の現場で使う自動化リテラシーへ寄せられています。IaC(Infrastructure as Code)は概念としては残るものの、実機で操作するツールとして名前が挙がるのはAnsibleのみ、という扱いに変わりました。

新セクション5.0「AI, and Network Operations and Management」を読み解く

新5.0はウェイト10%。公式ブループリントのサブトピックは、次の6つです。

  • 5.1 ネットワーク運用におけるエージェント型AIの役割を説明する
  • 5.2 データ分類・出力形式・ペルソナ・指示といった構成要素を考慮し、ネットワーク運用を支援する生成AIへ送るプロンプトを選択する
  • 5.3 ネットワーク管理アプローチ(デバイスベース、クラウドベース、コントローラーベース、自動化ベース、IaC)を説明する
  • 5.4 ネットワーク運用におけるSNMPの機能を説明する
  • 5.5 Ansibleなどの構成管理メカニズムを使ってコマンドを実行する
  • 5.6 syslogメッセージの内容・重大度レベル・ファシリティを解釈する

ここで一点、誤解を避けておきます。AIがCCNAに登場するのは、実はこれが初めてではありません。v1.1の時点(2024年8月導入)で、AI(生成・予測)と機械学習をネットワーク運用の文脈で認識する項目は既に存在していました。v2.0の新しさは、AIを”認識する”段階から、エージェント型AIの出力を評価し、自らプロンプトを設計する段階へ踏み込んだことにあります。実質的に今回net-newと呼べるのは5.1と5.2の2項目で、5.3はv1.1の自動化ドメインにあったコントローラーベースや自動化の概念と内容が重なります。

このセクションが伝えたいメッセージは明快だと感じます。「AIを開発する人になれ」ではなく、「AIを賢く使い、その出力を評価できる人になれ」ということです。5.2のプロンプト4要素はその象徴で、たとえばOSPFのデバッグ出力を解析させたいなら、「シニアNEとして振る舞い(ペルソナ)、このOSPFデバッグ出力を分析し(データ分類)、隣接関係の問題を抽出して(指示)、番号付きリストで示せ(出力形式)」というように、要素を組み立てる発想が試されます。

生成AIプロンプトの4要素(ペルソナ・データ分類・指示・出力形式)をOSPF障害切り分けの例で示した図解

冒頭で引いた試験説明文の一節——AIの出力と推奨を評価する場面が出題されうる——は、まさにこの思想の表れです。AIが出した答えが正しいとは限らない前提で、信じるべき時と疑うべき時を見分ける。その判断こそが、これからのNEに求められるスキルとして資格に組み込まれたわけです。

出題方針の転換——「説明」から「診断・構成」へ

ドメイン構成と並んで見逃せないのが、出題で使われる動詞の傾向です。全体として、Describe(説明する)からTroubleshoot/Diagnose(トラブルシュートする・診断する)へと比重が移りました。

たとえばインターフェースやケーブルの問題は、信号レベルやピンアウト、距離、ケーブル種別まで踏み込んで「診断する」項目になりました。静的ルーティングは「トラブルシュート」へ、OSPFはv2に加えてIPv6向けのOSPFv3が追加。レイヤー2セキュリティにはストームコントロールやRAガードが加わり、セキュアなファイル転送はSFTP/SCPへ置き換わっています。

ただし、すべてがTroubleshootに振れたわけではありません。新5.0のAI項目(5.1・5.3・5.4)や、ハイパーバイザ・コンテナの役割(1.2)、ワイヤレス原理(1.5)、IPsec VPN(4.5)などは、引き続きDescribe(説明・記述)レベルで問われます。あくまで「全体の傾向としてハンズオン寄りになった」という捉え方が正確です。とはいえ、知識として語れるだけでは足りず、与えられたトポロジの中で原因を切り分けて直せるか——現場でNEが毎日やっていることに、試験がぐっと近づいたのは間違いありません。基盤・接続とスイッチングで50%、AIは10%という比重を見ても、「派手なAIに飛びつく前に、足元の手を動かす力を固めよ」というCiscoの本音が透けて見えます。

今受けるべきか、v2.0を待つべきか

現在学習中の方への結論は、シンプルです。現行のv1.1を2027年2月までに取り切るのが、多くの人にとって合理的だと考えます。

理由は三つ。取得できる資格は新旧で等価であること。サブネット計算、OSPF、スイッチング、ルーティング、ACLといった基礎スキルはv2.0にもそのまま引き継がれ、学習が無駄にならないこと。そして新ブループリントは教材や演習環境がこなれるまで時間がかかり、初期は手探りになりやすいことです。すでに走っているなら、立ち止まる理由は薄いでしょう。

例外があるとすれば、これから学習を始めて現実的に試験準備が2027年後半までずれ込む人。この場合は最初からv2.0で組み立てる方が筋が通ります。加えて、プロンプト設計やIaCを「公式の出題範囲」という形で体系的に学びたいという動機があるなら、v2.0を待つ意味も出てきます。

なお、問題数や合格点については一般に語られる数字があるものの、Ciscoが公式に明示しているわけではありません。受験計画は、確実な日付情報(2027年2月3日の切り替え)を軸に立てるのが安全です。

ネットワークエンジニアから見た、この改定の意味

現場の実感として、AIの出力を「評価する」場面は、もう日常に入り込んでいます。設定の叩き台を生成させたり、ログの山から異常の当たりをつけさせたり。便利な一方で、もっともらしく間違える瞬間にも何度も出くわしました。そのときに踏みとどまれるかどうかは、結局のところ基礎の理解があるかにかかっています。

今回の改定が基盤とトラブルシュートに比重を置きつつ、AIを「評価対象」として組み込んだのは、この現場感覚と完全に一致します。AIに仕事を奪われるのではなく、AIの答えに責任を持てる人材を育てる——資格がそう舵を切ったのだと、私は受け止めています。

そして、CCNAがAI運用の「概念」を取り込んだその先には、AIインフラを実際にどう設計するかという、もう一段深い世界が広がっています。企業データを外に出さずオンプレミスでAIを動かす基盤、いわゆるAIファブリックのネットワーク設計です。これがSD-WANの延長ではまったくない、という話は、AIファブリック設計の記事で掘り下げています。

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