最近Xでよく見るアレ、何者?
ここ数ヶ月、Xのタイムラインで「ZUNDA CONNECT ROUTER」って名前を見る機会が急に増えてきたんですよね。
ネットワークエンジニア(以下、NE)として10年以上、官公庁やエンタープライズの案件でCisco IOS/IOS-XE/NX-OSやFortiGate、Yamaha RTXあたりを触ってきた身からすると、最近の国産法人ルーターでここまで気になる製品って、正直あんまりなかったかなと。
「これ、なんかヤバそうじゃない?」というのが第一印象で、ちゃんと公開情報を追いかけてみたら本当にヤバそうだったので、現時点(2026年4月)でわかっている情報を整理しておきたいと思います。
なお、この記事は実機レビューではありません。現状はまだベータテスト段階で、一般販売は始まっておらず、価格も未公開です。あくまで公開情報ベースの分析として読んでいただければ。
余談:そもそも「ZUNDA」って、あの緑の?
最初に、地味に気になってた話から。
社名「ZUNDA株式会社」、読みは公式に「ずんだ」。コーポレートカラーも緑系。これ絶対あのずんだ餅のずんだだろ……と思って調べたら、shao代表(澤田翔氏)本人がポッドキャスト「今出川FM」でこんな話をしてました。
「名前のZUNDAとは別に枝豆を作ってるわけではありません。イベントではよくずんだ餅を出させていただいているんですけれども、勝手に出しているだけです」
「最近ネットワーク機器を作ったりして、誰かがずんだもんルーターだって言われたんですけど」
直接の語源ではないと言いつつ、イベントでずんだ餅を配っていたり、ユーザーから「ずんだもんルーター」と呼ばれて受け入れていたりと、緑のずんだ連想は明らかに楽しんでいるスタンス。
ネットワーク機器の世界はCisco・Juniper・Palo Alto・Aristaみたいな海外ベンダー名が並ぶ中で、「ずんだ」っていう日本のスイーツ的な響きの社名でガチの法人ルーターを作ってくる。この温度感、個人的にめっちゃ好きなんですよね。
現在の提供状況:ベータの真っ最中
事実関係を整理しておきます。公式ニュースとIT Admin Blogを追いかけて時系列を組むとこうなります。
- 2025年6月:Interop Tokyo 2025で正式発表
- 2025年12月:初期ロット数十台が到着、ベータテスター第1次選考が開始
- 2026年2月:秋葉原UDXで「おわたし会」を開催、ベータテスターに実機を配布
- 2026年1月以降:第2次以降のバッチを順次選考・配布中
- 2026年4月時点:価格・正式リリース時期はまだ未発表、「Japan IT Week 春 2026 Tokyo」「Japan IT Week 名古屋 2026」への出展予告あり

つまり今は「お金払って買える」状態ではなく、ベータプログラムに応募して当選すれば触れる段階です。法人向けには別途パートナー制度(ISP/VNE/SIer/MSP/販売店向け)があって、検証環境の提供や再販相談を受け付けているようです。
どんな規模の会社向け?──大企業向けではなく、SMB寄りの設計
ここ、自分も最初は「Cisco/Yamahaの代替を狙う重厚長大エンプラ向けかな」と思ってたんですけど、調べてみると違いました。
ZUNDAは公式には「あらゆる規模の組織」を掲げているものの、実態は中小企業(SMB)から中堅企業を中心にコーポレートIT支援をやってきた会社。これまでの導入事例も、Helpfeel、ANYCOLOR、WealthNavi、キッズスターといった成長中のスタートアップや中堅企業が中心です。
ZUNDA CONNECT ROUTER自体の設計思想を見ても、
- 「ひとり情シス」でも運用できる
- 「管理者がいない拠点」でもクラウドから面倒を見られる
- ケーブル差し替えだけで設定が復元するゼロタッチプロビジョニング
といった、人が貼り付けないオフィスを前提にしているのが明確に伝わってきます。本社情シスが何十人もいて全拠点を専任で見ているような大企業ではなく、「拠点はあるけど現地にIT専任は置けない」というタイプの組織にハマる設計です。
ただ、多拠点展開している飲食チェーン・小売店・サテライトオフィスのような用途では、大企業の支店ネットワークでも普通に刺さると思います。実際、ターゲットセグメントとしてリテールや多拠点展開も明示されているので、本社規模に関係なく「拠点が散らばってる組織」全般が射程かなと。
ハードウェアスペックを見て、ちょっと笑った
ベータ機の構成、こうなっています。
- 10Gbpsポート × 4
- 2.5Gbpsポート × 4
- Intel Core i3 N305(8コアのAlder Lake-N)
- DDR5-4800 SODIMM スロット × 1
- M.2 NVMe SSD スロット × 1
- mini PCIe スロット(LTEモジュール用)

10Gbpsポートが4つある時点で家庭用WiFiルーターとは別世界ですし、CPUが汎用x86のCore i3 N305って、ぶっちゃけ小型サーバーなんですよね。
NEを長くやってると、ルーターは「専用ASIC + 組込みOS」路線が王道で、Cisco ISRもFortiGateもYamaha RTX系もこの設計思想で進化してきました。それを真っ向から「x86 + ソフトウェア処理 + 高速NIC」で殴りに来てる構成です。最近はソフトウェアでパケット処理する系の技術もこなれてきたので、こういう作り方で性能が出せる時代になってきたんだろうな、というのが正直な感想です。
個人的に「これは効きそう」と思った3つの特徴
① IPv4 over IPv6への完全対応
ZUNDA CONNECT ROUTERは、日本の主要な「IPv4 over IPv6」技術(MAP-E、DS-Lite、IPIP6)にすべて対応しています。
これがあると、
- 夜の混雑時間帯でもWeb会議が止まりにくい(PPPoE網終端装置の輻輳影響を回避できる)
- 10Gbps契約してるのに数百Mbpsしか出ない、みたいな現象が起きにくい
- ホームゲートウェイ(HGW)の後ろにルーターを置く二重NAT構成にしなくて済む
3点目は地味ですけど、案外効きます。海外製のクラウド管理ルーターを入れた拠点で「PPPoEだと遅いから、HGWを前段に挟んで二重ルーター構成にした」みたいなパターン、現場ではよく見る話なので。最初からIPoEで素直に通せるのはシンプルでいいなと。
② 4G閉域網を内蔵したOOB管理
ルーターの中に4G通信モジュールが入っていて、メインのインターネット回線とは別経路で管理用クラウドに繋がる構成になっています。

これがあることで、
- 主回線が落ちても、遠隔からログ確認・再起動・設定ロールバックができる
- 設定ミスでSSHから自分を締め出しても、クラウド側から復旧できる
- 光回線の開通工事前に、機器の事前設定や動作確認ができる
- 拠点に物理的に駆けつける回数を大幅に減らせる
通常これを実現しようとすると、コンソールサーバー+LTEモジュール+SIM契約を別ベンダーで組み合わせる必要があって、機器も契約も増えるんですよね。それを最初から本体に内蔵しているのは、運用コスト的にもかなり大きいなと。
おまけに、管理ポートをインターネット側に一切露出させていない=外部からのスキャンや認証突破を狙う攻撃の入口を減らせる、というセキュリティ面の効果もあります。
③ 設定がJSON、操作はすべて監査ログに残る
ベータ版では設定の投入はJSON形式(将来的にGUIの「かんたん設定」も予定とのこと)。加えて、管理画面のログインはZUNDA内製のIdP「ZUNDA ID」を使う仕組みになっています。
これによって、
- 設定の世代管理ができる(バックアップ・差分確認・ロールバック)
- 「誰がいつ何を変えたか」が監査ログで全部追える
- 同じ設定パターンを別拠点に展開しやすい
- ベンダー独自CLIを覚え直す学習コストが小さい
地味に聞こえるかもしれませんが、コンプライアンス監査が厳しい業種では「誰が何を変えたか即答できる」って結構大事ですし、多拠点に同じ構成を展開する場合にもテキストベースの設定は楽です。Ansibleで構成管理してきた人なら、違和感なく入れる世界観かなと。
逆に、まだ気になっているポイント
絶賛だけ並べても胡散臭いので、現時点で保留中の論点も書いておきます。
- 価格モデルの中身:月額サブスクなのは確定だけど、具体的な金額が未公開。RTX1300の買い切り+保守と比べてTCOで有利になるかは、月額が出てから計算してみたい
- SLAと障害対応:クラウド側がダウンした時にデータプレーンがフェイルオープンするのか、設定変更がローカルキャッシュで継続できるのか
- 既存環境からの移行:Cisco/Yamaha設定からのインポート手段や移行支援があるのかどうか
- 大規模・多拠点での運用実績:現状のベータは個別事業所中心っぽいので、数百拠点規模での運用知見はこれから蓄積される段階
このあたりはGA(一般提供)が始まってからの情報を待ちたいところ。
個人的に一番欲しいのは、実は「DEV ROUTER」のほう
ZUNDA CONNECT ROUTERには兄弟モデルとして「ZUNDA DEV ROUTER」というのがあって、これがまた面白いんです。
筐体は同じなんだけど、ブートロックが解除されていて、OpenWrtやVyOS、各種Linuxを自由に入れて使える。コンソールポートとUSBポートも開放、mini PCIeスロットも空いている。
要するに、Core i3 N305 + 10Gbps×4 + 2.5Gbps×4のx86小型ボックスが手に入って、好きなNOSを乗せられる、というホームラボ勢には刺さりすぎる仕様。
CCNAの勉強で「実機で触れる検証ラボを組みたい」という人にとっても、これはかなりの選択肢になるんじゃないかなと思います。自分は研究用にFortiGate 60Fを置いてるんですけど、それと並べてDEV ROUTERでVyOSやOpenWrtを動かして遊びたい欲がすごいんですよね。
DEV ROUTERは現時点ではオンライン販売の準備中ということで、続報待ちです。
触ってみるにはどうすれば?
「気になる、触ってみたい」という人向けの導線を整理しておきます。
- 個人エンジニア・ホームラボ勢:ZUNDA公式のベータテスト応募ページから申し込み(選考あり)、または今後予定されているDEV ROUTERのオンライン販売を待つ
- 法人:ZUNDA CONNECT ROUTERパートナー制度(ISP/VNE/SIer/MSP/販売店向け)への問い合わせ
- イベント参加:Japan IT Week 春 2026 Tokyo、Japan IT Week 名古屋 2026 のZUNDAブースで実機を見る
応募しても当選しないと触れないので、気になる人は早めに動いておくのが良いかなと。
おわりに
正直、この記事を書きながら「これ、自分で触ってみたい欲」がだいぶ強くなりました。
「日本特有のIPoE環境にネイティブ対応」「OOB管理が筐体内蔵」「JSON駆動の構成管理」という3点だけでも、現場のNEからすると「いやこれ俺が欲しかったやつでは?」となる要素が多いんですよね。
もちろんベータ段階で未確定要素も多いし、サブスク価格次第では中小拠点には重いという可能性もあります。ただ、技術的なアプローチが「真面目に日本のネットワーク事情を解きにいってる」感じがあって、素直に応援したくなる製品だなと感じています。
ベータに当選するか、GAされたら、絶対に触ってレビュー記事を書きたいと思っているので、続報を待ちつつ、ベータ応募もしてみる予定です。あとずんだ餅も食べたい。