DevNetは終わった|Cisco資格が「AIと自動化」へ動いた話【2026-2027】

2026年2月3日、DevNet資格が姿を消しました。そして2027年2月3日、今度はCCNAが新しくなります。

名前が変わっただけ、と片づけられがちです。しかし中身を読むと、Ciscoが求める人物像そのものが変わっています。しかもプロ向けと入門向けで、1年ずらして、別々の方向に動いている。この記事では、現場のネットワークエンジニア(以下、NE)の視点で、何がどう変わったのかを整理します。

Cisco資格改定2026-2027のタイムラインとDevNet系の新旧対応表

全体像:動いたのは2つの層

まず、混同しやすいポイントを先に潰しておきます。

2026年から2027年にかけて、「CCNA」と名のつくものが2つ登場します。この2つは、まったくの別物です。

CCNA Automation CCNA(従来のCCNA)
試験コード 200-901 200-301
前身 DevNet Associate CCNA v1.1
時期 2026年2月3日〜 v2.0が2027年2月3日〜
位置づけ 自動化の入門資格 ネットワークの基礎資格

CCNA Automationは、DevNet Associateの名前が変わったものです。従来のCCNA(200-301)とは無関係で、試験コードも別。一方、従来のCCNAは試験コードが200-301のまま、中身だけがv2.0に更新されます。

つまり動いたのは、次の2つの層です。

  • プロ層:DevNet系 → Automation系(2026年2月3日)
  • 基礎層:CCNA v1.1 → v2.0(2027年2月3日)

そして重要なのは、この2つが同じ方向に動いていないことです。順番に見ていきます。

プロ層:DevNetからAutomationへ

移行そのものは、拍子抜けするほど簡単

まず安心してよい点から。移行に追加試験は必要ありません。

旧(〜2026年2月2日) 新(2026年2月3日〜) コード
DevNet Associate CCNA Automation 200-901
DevNet Professional CCNP Automation 350-901(コア)
DevNet Expert CCIE Automation

すでにDevNet資格を持っている人は、自動的に新しい名前の資格保有者になります。手続きは不要です。

コンセントレーション試験(CCNP Automationで必要な2科目目)は、現在ENAUTO(300-435)とDCNAUTO(300-635)が主軸です。DevNet時代にあった一部の試験はすでに終了しています。ただし選択肢の全体像は情報が揺れているため、受験前にCisco公式で必ず確認してください。

中身は「別の資格」になった

問題はここからです。コア試験の中身が、名前の変更どころではない変わり方をしています。

旧DEVCOR(350-901 v1.1)は5つの分野がそれぞれ20%ずつの均等配分でした。

  1. ソフトウェア開発と設計
  2. APIの利用
  3. Ciscoプラットフォーム
  4. アプリケーションの展開とセキュリティ
  5. インフラと自動化

新AUTOCOR(350-901 v2.0)は4つの分野に再編されました。

分野 比率
ネットワーク自動化 30%
Infrastructure as Code 30%
オペレーション 20%
AI in Automation 20%
旧DEVCORの5ドメインと新AUTOCORの4ドメインの比較図

見比べると、変化の性格がわかります。「Ciscoプラットフォーム」の分野が、コア試験から完全に消えました。 旧試験で20%を占めていた、Webex・Meraki・Intersightなどの製品ごとのAPI操作は、コアからコンセントレーション試験へ移されています。

APIの扱いも縮小しました。旧試験ではAPI関連だけで独立した分野(20%)がありましたが、新試験では自動化分野の中の一項目に圧縮されています。

代わりに増えたのが、Infrastructure as Code(30%)と、まったく新しいAI in Automation(20%)です。

要点を一言でまとめると、こうなります。

アプリを作れる人を認定する試験から、ネットワークの自動化を設計できる人を認定する試験に変わった。

CLIを叩く人(オペレーター)から、自動化の仕組みを組み立てる人(オーケストレーター)へ。プロ層に対するCiscoの要求は、この方向に振り切っています。

本丸:AIドメインに何が書かれているか

新設された「AI in Automation」の中身が、この改定でいちばん驚く部分です。

公式の試験範囲には、次のような項目が並んでいます。

  • LLMを活用した、ネットワーク自動化のための会話型エージェントの構築
  • Python FastMCPを使った、MCPサーバーの構築

MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントが外部のツールやデータにアクセスするための仕組みです。それが、Ciscoのプロフェッショナル資格の試験範囲に、固有名で入りました

「AIを理解しましょう」という抽象的な話ではありません。実装が問われます。

何を作ることになるのか

構成としてはシンプルです。

AIエージェント・MCPサーバー(FastMCP)・ネットワーク機器の3層構成と信頼境界を示す図
  1. AIエージェント:自然言語の指示を解釈し、どのツールを呼ぶか決める
  2. MCPサーバー(FastMCP):ツールを定義して公開し、機器へコマンドを実行する
  3. ネットワーク機器show ip bgp summary などを実行し、結果を返す

「BGPのネイバーが落ちてないか見て」と話しかけると、エージェントがMCPサーバー経由でルータに問い合わせ、結果を要約して返す。そういうものを、自分で作れるかが問われます。

なお、ローカルLLMの実行環境としてOllamaがよく使われますが、公式の試験範囲にOllamaやLangChainという固有名は記載されていません。試験に固有名で登場するのは、LLM・MCP・FastMCPです。学習教材で見かけても、必須ツールと思い込まないほうがよいでしょう。

NEとして、見逃せないリスク

構成図をもう一度見てください。認証情報を持っているのは、AIではなくMCPサーバーです。

ここに、実務上の危うさがあります。

  • 権限が残り続ける:エージェントに与えたアクセス権は、会話が終わっても消えない
  • MCPサーバーは非人間ID(NHI)である:人間ではないものが、機器の認証情報を握って動く
  • 読み取り専用に限定しなければ、誤判断が設定変更に直結する

LLMが賢いかどうかは、この問題と関係ありません。問題は、権限をどこに置き、どこまで絞るかです。試験勉強としてMCPサーバーを立てる人も、いきなり本番機器の特権アカウントを渡すのは避けてください。

基礎層:CCNA v2.0は、逆方向に動いた

さて、ここで注意が必要です。

「Cisco資格はAIと自動化へ」という話を、そのままCCNA(200-301)に当てはめると間違えます

CCNA v2.0で起きたことは、こうです。

  • 分野が6つから5つに減った
  • 独立していた「自動化とプログラマビリティ」の分野が、廃止された
  • その内容は、新しいセクション5.0に吸収された
  • トラブルシューティングの比重が大きく増えた
  • 基礎とスイッチングだけで、全体の50%を占める
  • QoSなどが削除された

自動化が独立した柱ではなくなり、代わりにトラブルシューティングが前に出た。プロ層とは、明らかに逆方向です。

AIの扱いも、プロ層とは違う

CCNA v2.0にもAIは入ります。しかし中身が違います。

問われるのは、エージェンティックAIの出力を評価できるかです。AIが出した推奨をそのまま信じてよいのか、判断できるか。有効なプロンプトを選べるか。syslogを読めるか。Ansibleでコマンドを実行できるか。

MCPサーバーを実装しろ、とは言われません。Ciscoは、CCNAをプログラミング資格にはしませんでした。

つまりCCNA v2.0が描く人物像は、こうです。

AIが出してきた答えを鵜呑みにせず、自分で切り分けられる若手。

これはむしろ、現場の実感に近い改定だと思います。

現役NEにとって、この改定は何を意味するか

2つの層は、違う方向に動きました。しかし要求されているものは、根っこで繋がっています。

手を動かす人から、判断する人へ。

プロ層では、それが「自動化の仕組みを設計できるか」という形で問われます。基礎層では、「AIの出力を評価できるか」という形で問われます。どちらも、作業そのものは機械がやる前提です。

現場の感覚として、これは正しい方向だと感じます。設定投入だけができるNEの価値は、下がり続けています。一方で、自動化の設計と、その結果の妥当性を判断できる人は足りていません。

なお、資格による給与への影響を示す統計は、海外のもの(北米中心)しか見当たりませんでした。国内のネットワーク自動化スキルに絞った公的統計は、確認できていません。数字を探すより、自分の現場で自動化を一つ形にしたほうが、話は早いと思います。

受験を考えている人へ

最後に、実務的な整理です。CCNAの学習順序を全体像から見たい人は、CCNAロードマップもあわせて参照してください。

CCNAをこれから受ける人
2027年2月2日まではv1.1で受験できます。取得すれば3年間有効です。慌ててv2.0を待つ理由はありません。今の教材で今受けるほうが確実です。

自動化に踏み込みたい人
CCNA Automation(200-901)が入口です。CCNAとは別の資格なので、両方持つ意味があります。

DevNet Professionalを持っている人
何もしなくてもCCNP Automationになります。ただし、再受験や更新のタイミングで直面するのはAUTOCOR v2.0であり、これは以前とは別の試験です。特にIaCとAIドメインは、DEVCOR時代の知識では歯が立ちません。

これからCCNP Automationを狙う人
コア(AUTOCOR 350-901)とコンセントレーション1科目の2科目構成です。Cisco U.のラーニングパス、Cisco Modeling Labs(CML)、pyATSといった公式教材が用意されています。試験範囲のPDFは必ず公式サイトで最新版を確認してください。


DevNetという名前は消えました。しかし消えたのは名前だけで、Ciscoが本当に消したのは「ネットワーク屋はCLIを叩く人」という前提のほうだったと思います。

2027年2月、CCNAが変わります。それまでに何を触っておくか。FastMCPでルータに話しかける実験は、週末に試せる程度の分量です。

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