結論から言うと、僕は睡眠時間を削る方向には行きません。代わりに、昼休みに15分だけ仮眠をとっています。
ここ最近、「1日30分睡眠」「睡眠は訓練で短くできる」といったショートスリープの話題をSNSや動画でよく見かけました。空いた時間で勉強も副業もできるなら魅力的に聞こえます。
ただ、フリーランスのネットワークエンジニア(以下、NE)として10年以上現場に立ってきた実感として(NEは、企業や官公庁の社内ネットワークやインターネット接続を設計・構築・運用する仕事です)、寝不足の日の自分は信用できません。この記事では、ブームの中身を整理したうえで、僕が選んだ「足す睡眠」である15分仮眠のやり方を紹介します。
ショートスリープブームとは何だったのか
ブームの中心にあったのは「短時間睡眠は訓練で身につく」という主張です。発信者の真似をして「1日30分睡眠を7日間続ける」といったチャレンジ動画も広がりました。
この流れには医療側から懸念が出ています。日経メディカルの編集者ブログは、数日の断眠でも精神的な変調が起きることや、無理な短縮が長期的に認知症リスクに関わる可能性を挙げ、健康を害する”ブーム”として問題視しています(日経メディカル)。
忙しい人ほど「寝る時間を削れば解決する」と考えがちです。でも、それは時間の問題を体の借金で払っているだけかもしれません。
科学的に見たショートスリーパーの実態
本物のショートスリーパーは遺伝的な体質で、訓練でなれるものではない、というのが現在の医学的な見方です。
- ごく少数の体質:2019年のカリフォルニア大学の研究では、発生頻度は10万人に約4人とされています(メディカルドック)。
- 遺伝子が関わる:DEC2、ADRB1に続き、2025年にはSIK3の変異も報告されています(saganos)。
- 自己申告は当てにならない:SIK3変異を持つ女性でも、本人の申告は「3時間」、活動量計の実測は平均6.3時間でした(睡眠コラム)。
さらに怖いのは、寝不足の影響を自分で自覚しにくいことです。2003年のVan Dongenらの実験では、睡眠を6時間に制限した状態を2週間続けると、徹夜2晩ぶんに相当する認知機能の低下が起きました(Smart Watch Life)。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠を確保するよう勧めています(厚生労働省)。
NEの仕事には、夜間の作業や急なトラブル対応がつきものです。社員が使っている昼間にネットワークを止められないため、機器の入れ替えや設定変更は、利用者の少ない深夜や休日に行うことがよくあります。通信が止まるトラブルが起きれば、時間を問わず復旧に呼ばれます。
こうした作業では、設定ミス1つで会社全体の通信が止まることもあります。だからこそ「自分は平気」という感覚こそ、一番信用してはいけないと考えています。
自分が選んだのは昼休み15分の仮眠
削るのではなく、足す。僕の答えは、昼休みに15分だけ眠ることです。
理由はシンプルで、午後の眠気が一番仕事の質を落とすからです。特に、設計レビュー(ネットワークの構成案をチームで確認する打ち合わせ)や、パラメータシート(機器に入れる設定値をまとめた一覧表)の作成・チェックは、細かい数字を追い続ける作業です。集中力がそのまま品質に出るのに、昼食後の眠い頭ではコーヒーを足しても大きくは変わりませんでした。
15分にしたのは、深い眠りに入る前に起きるためです。前述の睡眠ガイドでも、昼寝は午後の早い時間に短時間とることが勧められており、長い昼寝は夜の睡眠を妨げる点に注意が促されています。
15分仮眠の実践方法
僕の働き方はオフィス出社と自宅リモートの併用です。どちらの日も、ルールは同じにしています。
- 昼食を先に済ませる:食べてすぐ横になるより、食後に少し落ち着いてから寝るほうが起きやすいです。
- タイマーは15分:スマホかスマートウォッチのバイブで起こします。音は周りに迷惑なので使いません。
- 横にならない:出社日はデスクで椅子にもたれるか、机に伏せます。リモートの日もベッドには行かず、ソファか椅子で済ませます。
- 光と音を切る:アイマスクとイヤホン(ノイズキャンセリング)で「目を閉じる環境」を作ります。
- 眠れなくても目を閉じるだけでOK:寝落ちしなくても、15分目を閉じて情報を入れないだけで頭が軽くなります。
リモートの日にベッドを避けるのは、一度横になると15分で起きられる自信がないからです。仮眠は「休む」より「リセットする」くらいの感覚がちょうどいいと感じています。
机に伏せて寝るなら、デスク用の昼寝枕があると楽です。僕が使っているのも、こだわって選んだものではなく適当に買った安いものですが、15分の仮眠ならそれで十分でした。顔の部分に穴があいたうつ伏せ用なら、息苦しさや腕のしびれを抑えやすくなります。
続けてみて感じた効果
一番の変化は、14〜16時の「魔の時間帯」がなくなったことです。以下はあくまで僕個人の体感です。
- 午後の作業ミスが減った:設定値の見直しやパラメータシートのチェックで、見落としに気づきやすくなりました。
- 夕方まで集中が続く:午後に大事な打ち合わせや作業を入れても不安がなくなりました。
- カフェインの量が減った:午後のコーヒーを「眠気対策」で飲まなくなりました。
夜の睡眠を削っているわけではないので、「時間を得た」というより「午後の時間の質が上がった」という感覚です。
注意点
仮眠は夜の睡眠の代わりではなく、あくまで補助です。
- 30分を超えない:長く眠ると深い眠りに入り、起きた直後にかえってぼんやりします。夜も眠りにくくなります。
- 遅い時間に寝ない:夕方以降の仮眠は夜の睡眠に響くので、昼休みの時間帯だけにしています。
- 毎日耐えられない眠気があるなら要注意:仮眠でごまかさず、夜の睡眠時間を見直すか、医療機関に相談するのが先です。
夜の睡眠の質を上げる工夫は月7日の深夜対応をやめた。エンジニアが睡眠のために手放したもの、買ったもので紹介しています。
まとめ
ショートスリーパーは一部の人の体質で、真似して目指すものではありません。パフォーマンスを上げたいなら、夜の睡眠はしっかり確保し、昼に15分だけ足すほうが現実的です。
必要なのはタイマーとアイマスクくらい。明日の昼休み、まずは15分だけ目を閉じてみてください。
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